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3.分娩とその手当

 

(1)分娩の準備

分娩予定日が近づくと乳器、外陰部、尾根部等に特有な徴候が現れます。分娩室を準備し、 子牛を拭くためのタオル、ヘソの緒の消毒するヨードチンキ、新しい敷料などを揃えておきます。 また、難産を想定し消毒液やロープも準備します。

 

(2)昼間分娩法

分娩事故防止対策として昼間に分娩させる方法があります。
その手順は、分娩予定日のおよそ2週間前から飼料給与を夕方から夜間(16時以降)の 1日1回の給与に切り替え、翌朝残飼があれば取り除きます。このことにより高い確立で 昼間に分娩を集中させることができます(表3-1)。ただし、毎日の飼養管理を正しく行い、 昼間に牛がゆっくり休息できる状態に保つことが大切です。

表3-1.昼間分娩成績
時  刻(時)
0~ 2~ 4~
6~ 8~ 10~ 12~ 14~ 16~
18~ 20~ 22~
分娩頭数
(頭)
割合(%)
0  2  2
←---→
22.2
3  1   6   2   2   0
←------------→
77.8
 0  0  0
←----→
(長崎畜試 1991)

(3)分娩徴候と分娩経過

分娩の徴候と分娩の経過を表3-2に示しました。陣痛が始まったら牛を興奮させないように 日頃管理する人が優しく声をかけながら見守り、分娩が正常か異常かを見分ます。
難産のきざしは表3-3のとおりです。このような状態の時は、早めに獣医師や経験の豊富な人に 処置を依頼しましょう。

表3-2.分娩徴候と分娩経過

経過徴候
分娩が近づく・外陰部が膨れる。
・尾根部の両側のくぼみが増す。
・乳房が張り、つやが出てくる。
分娩1~2日前・外陰部から粘液が出てくる。
・粘液が次第に柔らかさを増す。
・乳の色が黄から白に変わる。
分娩当日・乳の色が白くなる。
・外陰部が腫大する。
・粘液の分泌量がさらに増す。
陣痛開始・糞尿の頻度が不規則となり少量ずつ回数が増える。
・背を曲げ尾を上げる姿勢を取るようになる。
・採食反芻が不規則となり特異な行動をとる。
・不安そうに歩さ回り寝たり起きたりする。
分娩開始・横になることが多くなる。
・怒嘖をともなう。
・産出陣痛のため、いきみを数分毎に繰り返す。
第1破水・膣内もしくは膣口で胎胞が破水し、産道が滑らかになり、
 胎児が出やすくなる。
・陣痛から第1破水までは30分から1時間程度のものが多い。
・足胞が見え始める。
第2破水・第1破水によって興奮し、起立し歩き回る。
・やがて強い陣痛が起き羊膜が破れる(第2破水)。
・第2破水に続き、前肢、頭、体、後肢と娩出される。
・第2破水から20~30分で胎児が娩出されるのが普通である。
後  産・胎児が娩出された後、後陣痛がおこり、後産が出る。
・後産の出る時間は個体によって差はあるが、概ね4時間前後
 のものが多い。(12時間以上の時は後産停滞)

表3-3.難産のきざし
原因 ・陣痛が弱くて分娩が遅れる。
・産道が狭すぎるとか子宮が異常である。
・胎児の姿勢が異常であるとか過大すぎる。
状態 ・お産の始まりのおりものに血がたくさん混じって出てきた。
・第1破水の後、陣痛は起こっているのに1時間以上経過しても羊膜(第2胎胞)が出ない。
・陣痛が始まり第2破水が終わって2時間近く経過しても足胞が見えない。
・足胞が現れても鼻端が出てこない。
・鼻端が出ているのに肢蹄が出ない、また片方の肢しか出ていない。
・子牛の肢端と鼻端が見えてなお1時間近く経過しても頭が出ない。
・子牛の蹄が上を向いている(逆子)。
・後肢で腹を蹴り腹痛を訴える。

 

(4)分娩後の手当

 子牛が娩出されたら、直ちに口と鼻に付着した粘膜や粘液を乾いたタオルなどで拭き取ってやり、 その後は母牛に子牛の体をなめさせます。なめることで子牛と母牛の絆が強くなります。
 ヘソの緒は細菌の侵入を防止するため切口をヨードチンキで十分消毒します。また、 排出された後産は必ず取り除きましょう。

 

(5)生時体重の測定

子牛の手当が終わったら、生時体重を測定します。
 生時体重の測定にはヘルスメーター等を用いると良いでしょう。

 

(6)初乳と哺育

 分娩後約1週間に出る乳を初乳と呼びます。特に、3日間の初乳は胎便の排出を促す緩下剤としての作用や、 子牛に抵抗性を付与する免疫物質が多く含まれています(表3-4)。
 出生直後の子牛は、この免疫物質を吸収する能力が時間とともに急速に低下するので、 初乳をなるべく早く(1時間以内)飲ませるように努めます。哺乳が遅い場合は搾ってでも飲ませます。
 早産などで十分な量の初乳が確保できない場合を想定して、あらかじめ酪農家に経産牛の初乳を もらっておいて凍結保存(-20℃)しておくと良いでしょう。表3-5に投与基準を示しました。

表3-4.初乳と常乳の成分組成の遣い
区分全固形分脂 肪たんぱく質グロブリン態
たんぱく質
乳 糖灰 分
初乳27.6%3.5%22.5%16.4%1.1%0.5%
常乳11.9%2.7%4.1%0.9%4.3%0.8%
初乳の分析値は初回哺乳直前のものであり、常乳は分娩後1~26週までの平均である。
(久馬 忠,1976)

表3-5.凍結初乳の投与基準

用    途投与時期/1日投与回数/1日投与日数
母牛の乳が全く出ない2~3時間おき4~5回5日
母牛の乳が少ない朝、晩2回3日
同居子牛に下痢が発生
過去に下痢が多発
母牛が初産で乳の出が心配
哺乳力が弱い朝、昼、晩3回
生時体重が小さい
(壱岐郡畜産技術者会)
注)・1回の投与量は500mL
・融解は50℃位の温湯でゆっくり溶かし、人肌(40℃位)程度に温める。

(3)栄養状態の判定法


 栄養状態を判定する方法として最近、栄養度(ボディコンディション・スコア)が 採用されています(図2-1)。
 妊娠末期の栄養度の目安は5~6の区分で、全体的にやや丸みを帯びるか、手を軽く圧することによって 背骨、肋骨、座骨端などが識別され、うっすらと脂肪蓄積が感じられる状態です。
 この状態よりやせ気味の時は増し飼いを、過肥気味の時は粗飼料主体の管理にします。
妊娠末期はボディコンディションの調整期と考えましょう。

図2-1.「栄養度」判定要領と触診部位
区分やせている普  通太っている
非常にや
せている
やせて
いる
やややせ
ている
やせ気味 普  通太り気味 やや太っ
ている
太って
いる
非常に太
っている
123456789
主な
判定
基準
手を当てると直接骨に触れることができる。脂肪及び筋肉の付着が感じられない。 手を軽く圧することによって、骨が識別される。ある程度の脂肪層が感じられる。 相当の圧力なしでは、骨を識別できない。明らかに脂肪の蓄積が認められる。
(全国和牛登録協会より作成)

(4)分娩直前・直後の飼養管理

分娩室の利用期間は分娩前2週間程度、分娩後は最低2週間収容し、観察を強化します。 分娩予定の数日前から濃厚飼料の給与は徐々に減じ、分娩当日は粗飼料のみの給与として、 また、分娩後の増飼いは徐々に増やします。

(5)分娩後の母牛の飼養管理

分娩により母牛の体重40~50kg減少します。分娩後は分娩直後の体重より減少しないように、 泌乳量に応じた増飼いが必要です(表2-3~5)。また、妊娠末期と泌乳期間中はビタミンや ミネラルが不足しないように補給します。 実際の給与に当たっては、子牛の成長と母牛の栄養状態を観察しながら加減することが大切です。 授乳中の乳房は子牛の下痢を防止するため常に清潔さを保つよう心がけます。 分娩後は1年1産の達成のためパドック内の運動と日光浴を十分行いましょう。

 

(6)初乳と哺育

 分娩後約1週間に出る乳を初乳と呼びます。特に、3日間の初乳は胎便の排出を促す緩下剤としての作用や、 子牛に抵抗性を付与する免疫物質が多く含まれています(表3-4)。
 出生直後の子牛は、この免疫物質を吸収する能力が時間とともに急速に低下するので、 初乳をなるべく早く(1時間以内)飲ませるように努めます。哺乳が遅い場合は搾ってでも飲ませます。
 早産などで十分な量の初乳が確保できない場合を想定して、あらかじめ酪農家に経産牛の初乳を もらっておいて凍結保存(-20℃)しておくと良いでしょう。表3-5に投与基準を示しました。

表3-4.初乳と常乳の成分組成の遣い
区分全固形分脂 肪たんぱく質グロブリン態
たんぱく質
乳 糖灰 分
初乳27.6%3.5%22.5%16.4%1.1%0.5%
常乳11.9%2.7%4.1%0.9%4.3%0.8%
初乳の分析値は初回哺乳直前のものであり、常乳は分娩後1~26週までの平均である。
(久馬 忠,1976)

表3-5.凍結初乳の投与基準
用    途投与時期/1日投与回数/1日投与日数
母牛の乳が全く出ない2~3時間おき4~5回5日
母牛の乳が少ない朝、晩2回3日
同居子牛に下痢が発生
過去に下痢が多発
母牛が初産で乳の出が心配
哺乳力が弱い朝、昼、晩3回
生時体重が小さい
(壱岐郡畜産技術者会)
注)・1回の投与量は500mL
・融解は50℃位の温湯でゆっくり溶かし、人肌(40℃位)程度に温める。



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