8.子牛の疾病


(1)子牛の衛生対策と観察
 哺育育成期のおける疾病は、その後の子牛の発育に大きく影響します。そのため、 日常の健康観察、衛生管理が重要です。
 万一、疾病にかかったら早期に発見し、早期に治療を行うことが、被害を最小限にとどめる唯一の方法です。 また、異常に気付いたら自ら体温を計るなど獣医師との連携をよくします。健康観察の方法は表8−1に示しました。

表8−1.健康観察の方法
項 目正常の状態異常な状態疑われる病気及び状態
元気
食欲
食欲旺盛
元気
不振・減少した場合
群から離れている
消化器病・発熱性疾患・歯疾患・
栄養障害
挙動活発、歩様は軽
くて確実
不穏、怒責、苦悶、沈うつ、
異常な興奮、旋回、けいれん、
麻痺跋行、歩様の異常、
関節の腫れ
内臓の疼痛・中毒
感染症・B1欠乏症
蹄病・打撲・捻挫・関節炎・代謝病
体温初生牛
38.5〜40.5℃
幼 牛
38.0〜39.5℃

41.0℃以上

40.0℃以上
細菌・ウイルス性疾患・呼吸器病
呼吸10〜30回/分呼吸困難・腹式呼吸
呼吸数増加
重度の呼吸器病・気管狭窄
呼吸器病
反芻6〜8回/日
反芻の開始は
 食後30〜70分
1反芻持続時間
 40〜50分
減少、緩徐食滞・鼓張症・胃腸炎
熱性疾患(発熱時)
鼻鏡適度に湿り、
冷たい
乾燥
鼻漏
熱性疾患
呼吸器性疾患(肺炎等)
温和で活気が
ある
多量の流涙、眼ヤニ
粘膜の黄色化
結膜の充血
呼吸器病の初期・結膜炎・流行熱・
黄疸
貧血・内部寄生虫病・栄養障害
被毛光沢あり光沢なく脱毛
陰毛先端部に白色
小結石の付着
栄養障害・皮膚病
尿石症



(2)子牛の疾病とその対策
 子牛期の疾病で最も多いのは下痢等の消化器病と肺炎等の呼吸器病です。
 これらの疾病の主な原因は病原体の感染はもちろん、飼育環境の急変や悪化、 初乳の摂取不足などの生理的ストレスが大きく影響しています。
 下痢の場合は、低質な飼料の給与、飼料の急変(母子とも)や盗食もその誘因となります。
 また、子牛の糞便の性状、色、臭気、固さの変化は健康状態を知る上で重要です。 子牛の糞便の異常は少し注意深く観察することにより見分けることができます(表8−2、3)。
 子牛の呼吸器病(肺炎)は下痢よりも遅れて発生することが多く、また、下痢と合併したかたちで 発病することも少なくありません。牛舎内のアンモニア、二酸化炭素の発生は、肺の粘膜を刺激し 病原体の付着や侵入、増殖を容易にし肺炎の発生を助長します。
 予防としては、十分な初乳の給与、牛舎の清掃、乾燥、消毒、換気やワクチンの接種など定期的な 衛生プログラムの遵守が大切です。大腸菌による下痢症の予防として母牛の初乳を介するワクチンの 利用も有効です。また、感染しても発症しないか、発症しても軽症に抑えるために日頃から体力を つけさせることが重要です。

表8−2.新生子牛の正常ふん便の性状
ふん便の区分ふん便の性状
生後最初の排せつ便
(正常便)
出生前に形成された便、一般に出生第1日に排せつされる。帯緑黒色、粘着性がある。
生後第1週の排せつ便
(正常便)
ふん便の色は黄色〜淡褐色、固さはカユ状〜獣脂様脂肪性のものであって粘着性があり、 固形成分を全く含まない排せつした形を維持している。
代用乳切り換え後の
排せつ便
(正常便)
ふん便の色は、黄色から灰色がかる。
乾草またはワラを摂取し始めたものは、固形 成分を含む獣脂様脂肪性のねり粉状の固さとなる。
(Ludwig・Schrag らより作成)


表8−3.子牛のふん便性状による下痢症の分類
ふん便の症状下痢症の分類
形 状水様性

泥状
軟便
急性伝染性腸炎、大腸菌症の中期以降、サルモネラ
感染症、ウイルスおよびコクシジウム感染の末期
大腸菌症の初期
腐敗性、発酵性、単純性、寄生虫下痢
色 調白色、灰白色、黄灰色
淡黄褐色、淡橙色
暗色
大腸菌症、サルモネラ感染症、他の下痢の末期
発酵性、吸収不良性単純性下痢
腐敗性下痢、ウイルス性下痢
臭 気腐敗臭が強いとき
腐敗臭が弱いとき
酸臭のとき
腸管内細菌の異常増殖による腐敗性下痢
寄生虫、原虫および軽度のウイルス性下痢
発酵性、吸収不良性単純性下痢、大腸菌症
混入物血液
泡沫
粘液
消化不良残渣
サルモネラ菌、ウイルスおよびコクシジウムの感染
発酵性下痢
大腸菌症
消化不良便(消化の程度・障害部位により異なる)
注)*印は藤永(1979)より引用        (渡瀬、1979より作成)