2.分娩前後の母牛の飼養管理


(1)肉用牛の妊娠期間
 肉用牛の妊娠期間は平均285日(280〜290)間です。
 分娩予定日は「3引く10足す」、すなわち授精の日の月数から3を引き、日数に10を 足すことによって簡易に求めることができます(表2−1)。なお、妊娠期間は 個体によって変動があるので予定日の2週間前くらいから観察を強化します。

表2−1. 分娩予定日の簡易算出法
種付け日5月8日1月25日
月から3を引く5−3=2(月)1(+12)−3=10(月)
日に10を足す8+10=18(日)25+10=35(日)=1カ月5日
予定日2月18日11月5日


(2)妊娠末期の飼養管理
 妊娠牛は体を維持する栄養の他に胎児の発育に要する養分が必要となります。
 胎児は妊娠末期の2〜3カ月間に急速に発育する(表2−2)ので、 この時期には胎児の発育に必要な増飼いを行います(表2−3〜5)。
 ただし、牛の栄養状態が普通か若干よい程度であれば、それ以上与えても子牛の生時体重や 泌乳量に効果はありません。むしろ、分娩後、泌乳量に応じた適正な飼料給与が子牛の発育、 繁殖性に対して重要です。

表2−2.牛の胎児の各月における体長.体重と各器官の発育
妊娠月体  長体重(kg)器官の発育
第1月1.5cm 頭、四肢の区分が明らかとなる
第2月2×4  8cm 雄胎児は陰嚢が発生する
第3月3×5 15cm 胃の区分が認められる
第4月4×6 24cm0.9頭骨の化骨
第5月5×7 35cm2唇、頭上眼瞼に触毛を生ずる陰嚢に睾丸が下降する
第6月6×8 48cm5尾端に軟毛を生ずる
第7月7×9 63cm10角根部、蹄冠部に毛を生ずる
第8月8×10 80cm17背部、耳殻周縁に毛を生ずる
第9月9×10 90cm28全身に被毛が生ずる
第10月10×10 100cm 成熟する


表2−3.雌牛に必要な養分量
項  目維持  雌牛体重(kg)妊娠末期泌乳量
1kg当たり
400450500550
DM(kg)5.56.06.57.01.50.5
DCP(kg)0.220.240.260.280.090.06
TDN(kg)2.83.13.33.60.90.4
カルシウム(g)12141517142.5
リン(g)1315161851.1
ビタミンA(1,000IU)26303336注1注2
(日本飼養標準1987)
注1:体重1kg当たり  33IU
注2:体重1kg当たり 149IU


表2−4.黒毛和種の哺乳量(kg)
週 齢14812162024
哺乳量6.97.06.35.64.94.23.6
(日本飼養標準1987)


表2−5.給与例(体重450kgの場合)(kg)
飼料名維持期妊娠末期授乳期
(6kg)(3kg)
例1サイレージ18202220
稲ワラ221.51.5
配合飼料0131.5
例2生草20222524
稲ワラ2.52.522
配合飼料0131.5
注:( )は泌乳量、配合飼料は繁殖用


(3)栄養状態の判定法
 栄養状態を判定する方法として最近、栄養度(ボディコンディション・スコア)が 採用されています(図2−1)。
 妊娠末期の栄養度の目安は5〜6の区分で、全体的にやや丸みを帯びるか、手を軽く圧することによって 背骨、肋骨、座骨端などが識別され、うっすらと脂肪蓄積が感じられる状態です。
 この状態よりやせ気味の時は増し飼いを、過肥気味の時は粗飼料主体の管理にします。 妊娠末期はボディコンディションの調整期と考えましょう。

図2−1.「栄養度」判定要領と触診部位
区分やせている普  通太っている
非常にや
せている
やせて
いる
やややせ
ている
やせ気味 普  通太り気味 やや太っ
ている
太って
いる
非常に太
っている
123456789
主な
判定
基準
手を当てると直接骨に触れることができる。脂肪及び筋肉の付着が感じられない。 手を軽く圧することによって、骨が識別される。ある程度の脂肪層が感じられる。 相当の圧力なしでは、骨を識別できない。明らかに脂肪の蓄積が認められる。
(全国和牛登録協会より作成)


(4)分娩直前・直後の飼養管理
 分娩室の利用期間は分娩前2週間程度、分娩後は最低2週間収容し、観察を強化します。
 分娩予定の数日前から濃厚飼料の給与は徐々に減じ、分娩当日は粗飼料のみの給与として、 また、分娩後の増飼いは徐々に増やします。



(5)分娩後の母牛の飼養管理
 分娩により母牛の体重40〜50kg減少します。分娩後は分娩直後の体重より減少しないように、 泌乳量に応じた増飼いが必要です(表2−3〜5)。また、妊娠末期と泌乳期間中はビタミンや ミネラルが不足しないように補給します。
 実際の給与に当たっては、子牛の成長と母牛の栄養状態を観察しながら加減することが大切です。 授乳中の乳房は子牛の下痢を防止するため常に清潔さを保つよう心がけます。
 分娩後は1年1産の達成のためパドック内の運動と日光浴を十分行いましょう。